青春時代

鶴山旭祥さんと


琵琶樂人倶楽部17周年記念回は無事終える事が出来ました。私のやっているのはショウビジネスとは随分とかけ離れた地味な活動そして音楽ではあるのですが、今回は懐かしい友人も駆けつけてくれて、本当に良い会となりました。毎年秋のこの弾き語りの聴き比べの会は、年に一度フルで弾き語りをやる唯一ともいえる機会です。今回は経正をやったのですが、気持ち良く声が出ました。
こうしてずっと長い事続けて来られたのは、周りから生かされて来た証だと思っています。琵琶樂人倶楽部も私個人も、これから一年また淡々とやってまいりたいと思います。早、来年一年間のスケジュールも決まり、楽しみはどんどん続いているという訳です。今後共宜しくお願い申し上げます。

「ひらく古典のトビラ」本番舞台
前回も書きましたが、先日まつもと市民芸術館であった「ひらく古典のトビラ」も素晴らしい舞台になりました。また公演前日の食事会での芸術談義がとても豊かなひと時でした。その時、80代になる加賀美幸子さんが「60代は青春よ」という事をおっしゃっていて、とても納得し、印象に残りました。

考えてみれば60代は身体もまだ丈夫だし、これまでやって来た経験を基に充実した活動も展開できる。自分に合うものと合わないものもはっきりしてくるし、自分と違う感性が世の中には沢山あるという事も知る。情報も経験もそこから導き出される知性も、そして肉体も一番充実しているのが60代かもしれません。私は琵琶で活動し出したのが30代半ばでして、1stアルバムのリリースも40歳になってからです。少々世の皆さまより遅めだったことを考えると、私の青春時代はもっと70代になっても続いているかもしれないなと秘かに思っている位です。それまで身体に気を付けないといけませんな。

私はとにかく曲を創る事が自分の音楽活動の基本中の基本で、その上に演奏する事が乗っているのですが、ここ5年位で作曲の部分では充実したものを感じていて、また様々にやらせて頂いた仕事を経て、やっと自分らしい活動になってきたように感じています。40代はやみくもにやっている感じで、力技的な部分が多々ありましたが、40代も過ぎる頃には、自分に何が出来て何が出来ないかが見えて来ましたし、似合うもの似合わないものも判ってきました。まあ何事も理解するのが人より10年も20年も遅いのですが、それが私という人間なんでしょう。何度も失敗を重ねないと辿り着けない不器用極まりない人生ですが、その分時間をかけて自分のやる事をしっかりと見極めて嚙みしめてやるのが今生での私に与えられた使命なのでしょうね。

琵琶での活動の最初に創った曲もしつこく今でもやっていますが、演奏技術や経験が伴ってきたことで、なかなか良い形になって来ているように思います。

一昨年静岡の藤枝市にある熊谷寺にて、「まろばし」を演奏したのですが、それはとても充実したものでした。「まろばし」は私が琵琶で活動を始めた一番最初に作曲した曲で、今でもレパートリーとして必ず演奏している曲です。それもこの演奏会では、初演した時と同じ大浦典子さんと組んでの演奏でした。彼女自身も長い時間を経て、大いに充実して来ていて、演奏していて何か曲が成長したなという実感がありました。またこうして長い時間を一緒に演奏して来れた事にも感謝を感じました。

時間をかけるというものは良いものです。さらに言えば時間がどんどんと先へと続くのもまた面白いものです。ストックホルム大学やロンドンシティー大学での演奏会に行ったのももう21年前、シルクロードの国々にコンサートツアーに行ったのも15年前。物理的時間としては長いですが、どうも私は世に流れる時間の概念の中には生きていないのかもしれません。まあこれらの経験を経て今があると思うと、ワクワクして生きて来れたなと思います。

琵琶樂人倶楽部開催200回記念回にて 尺八の藤田晄聖君と

人間は今現在を把握することがなかなか難しい。後から振り返ってやっと見えて来るのが一般的な感覚でしょう。だからこそ人生の先輩の意見は是非聴くべきですね。私は琵琶を始めてから色んな先輩に話を聞いて、60歳を一つの大きなポイントとしようとずっと思って来ました。作品群も演奏活動も60歳をめどに一つの完成を感じられるようにしたいと常々考えていましたが、まあまあ納得の行く作品も少し出来上がって来て、地味ながらも活動も少しづつ展開して来て、目標には届かずとも近づいてきたかも

と感じています。これからも自分のペースで青春時代を謳歌したいですね。

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