
鎌倉の旧村上邸能舞台にて 安田登先生、優榊原有美さんと
先週末は、鎌倉にある旧村上邸能舞台にて演奏してきました。邸内の能舞台は素敵な庭に囲まれて、とても気持ちの良い場所でした。雨の一日でしたが、雨が庭の風情を一層高めてくれて、蒸し暑さも忘れ、久しぶりに爽快な時間を頂きました。
旧村上邸HP:https://kamakura-mirai-lab.com/ (以下はHPの画像を使わせていただきました)



先ず第一部は、安田登先生の呼吸法のレクチャーの中で、祇園精舎を演奏。第二部ではSpacの女優 榊原有美さんと安田先生と私の3人で、「耳なし芳一」を上演してきました。有美さんとは2度目の共演でしたが、演劇スキルの高い方でもありますので、今回もグッと引き込まれるような瞬間がいくつもありました。以前人形町のギャラリーでの初共演の時には、彼女のダイナミックな語りと琵琶の織り成す掛け合いが「ロックみたいだ」と評されましたが、今回もいい感じで盛り上がりましたね。実に面白いです。これまで「耳なし芳一」は、安田先生と私のコンビネーションの上に、浪曲師の玉川奈々福さん、劇団Mizhenの佐藤蕗子さん、そして榊原有美さんらを迎えやってきました。語りと私の二人のコンビでは櫛部妙有さんとも組んできましたが、それぞれに個性があって、やる度に様々な世界が見えてきて、面白くなって行きますね。今後も楽しみです。
今回は来場の皆さんと色々お話しする時間も頂いたのですが、皆さん大変に前向きで、お話も大変楽しいひと時でした。

今年の1月おおぶこもれびホールにて
現代日本人の生活を眺めていると、何だか楽しみ方が浅い感じがするのです。もっと楽しんでもいいのに・・・。アイドルを追いかけるのも、観光旅行も良いのですが、そういった眼の前の楽しさもさることながら、深く長く楽しめる芸能や歴史、自然文化がこれだけある国も珍しいんじゃないでしょうか。なんたって世界一の長さを誇る国家ですし、その蓄積も世界一です。これからの日本人がもっと色んな楽しみ方を知ったら、日本はあらゆる分野で劇的に変化して行くと思いますよ。
安田先生のお話の中で、「日本人の感性は、VRやAR等の新技術と同じような感性を既に古代から持ち合わせていて、次の時代を迎えるにあたって、大変可能性の高い資質を持っている」というお話には大変興味を掻き立てられました。この話は今迄にも何度も聴いているのですが、能舞台の中から、雨に濡れた庭を見ながらお話を聞いていると、更にその内容が心に浸透してきますね。和歌の感性などがその代表ですが、詳しくは先生の本を読んで頂くとして、そんな我々が元々持っている感性や文化は、これからの世の中で、とても重要なファクターとなりうると思えてしょうがないのです。
今後社会の在り方が、かなり速い速度で変わって行くと思います。今回の強制的なテレワークによって、都会の満員電車に乗る必要が無い事も判ったし、大きなオフィスを一等地に構える必要もない事は、皆が気づきました。都会に居る必要がなくなり、緑豊かな場所に移って、しかも日本中がネットワークでつながって行けば、文化の形も質も変化発展して行くでしょう。東京大学の入試でさえオンラインになる時代です。今迄の個人が暗記した知識でものを図るやり方や、組織の中で妙な忖度を強いられる慣習・システム、人との出会い等々、あらゆる分野、あらゆる事柄が根底から変わる時代に突入したのです、それも急激に変わる時代に。もう変化は目の前です。

日本橋富沢町楽琵会にて、フルートの久保順さんと photo 新藤義久
今迄は都会に居ないと成立しない文化が確かにありました。ジャズやロックなんか、確かに都会こそがその生息地だったし、異ジャンルとのコラボレーションなども都会にいるからこその出会いという部分が大きかったと思います。音楽家は皆都会のホールやライブハウスで演奏することが基本で、都会からから地方へ出かけて行くという一方向しかなかった。地方を拠点に移すと、地方限定タレントの様になって、なかなか東京の舞台には出てくなくなり、都落ちだなんて言われました。
しかし今後は、人々が都会に集中することなく、日本の豊かな自然と共に生きながら、社会が新たなネットワークでつながり、新たな生き方・働き方を構築して行くような時代が来るんじゃないかと思っています。
音楽は人心の投影と言えますので、都会の喧騒の中に普段から居る人と、緑豊かな自然の中に居る人では全く違うものが出てくるのは当然ですね。音楽の質も発信の仕方も変わって行きます。そしてリスナーの側も、嗜好や音楽との関わり方が変わるのは当たり前です。元々日本は自然が豊かな国ですので、また新たな音楽が生み出されてゆく可能性は、今後のライフスタイ
ルで大きく変わって行くでしょう。人が都会から離れることで、地方でのインフラももう少し整って行くだろうし、古来より自然と共生してきた日本人の感性が、あらゆる分野に深く大きく発揮され、これから日本は、文化も社会も豊かになって行くんじゃないでしょうか。楽観的ではありますが、そう思いたいですね。
ルで大きく変わって行くでしょう。人が都会から離れることで、地方でのインフラももう少し整って行くだろうし、古来より自然と共生してきた日本人の感性が、あらゆる分野に深く大きく発揮され、これから日本は、文化も社会も豊かになって行くんじゃないでしょうか。楽観的ではありますが、そう思いたいですね。

旧村上邸HPより
まだ国内外は騒然としていて、軍事衝突の影も見え始め、今後どのように展開して行くか予想も付きませんが、能舞台から雨に濡れる庭を見ていると、「この風情の中からしか生まれない音を私たちは持っている。その文化が次の時代を創って行くんだ」等々・・・そんな想いが溢れてきました。これからの新たな社会の中で、新たな形の日本文化が生まれ、新たな暮らしが始まる。きっとこんな事が次々と実現して行く世の中になって行くんじゃないのかな・・・?。豊かな時代を迎えたいものです。