

筑前琵琶 平野多美恵さん
そして今回のメインゲストは平野多美恵さん。平野さんは、このところ公私共に大変充実されているようで、前にも増して生き生きして見えました。様々な活動を模索しているようなので、これからが楽しみです。
周りの仲間が動き出すと、こちらも止まっている訳には行きませんね。邦楽以外にも、インド舞踊のエミ・マユーリさんなども最近動き回っていますし、陶芸の佐藤三津江さんは陶芸の枠を越えて活動を展開しているようです。何だか仲間が皆それぞれに動き出している、このなんともいえないエネルギーに満ちた盛り上がりは、いいものですね。私自身、昨年8thCDを出してから、随分と仕事の質や形が変わってきているのですが、それが今年は更に明確になって来ていまして、明らかにこれまでとは違う一歩を踏み出しているように感じます。
こういう変わり目の時には、色んな作品が生まれるものです。今創っている「四季を寿ぐ歌」の他にも作品が出来つつありますし、今迄とは違う共演者とも演奏の機会が増えてきて、色々な刺激を頂いています。

これまでの音楽家としての時間を振り返ると、流れが変り、活動が展開して行くきっかけはいつも人との出逢いが、その一番の要因ですね。確かに昨年辺りから、これまでとは違うジャンルやタイプの方々と随分知り合いになりました。それだけでもワクワクするのですが、自分で行く道を、その時々でしっかり見極め、自分自身をどのようにプロデュースして行くか、そういう視点も持っていないと、ただ流れに身を任せているだけでは流されてしまいます。自分でも何かしらの努力をし、また人に導かれ、そんな事が相まって、私という人間は生かされているということでしょうか・・・。

「運命はこころざし有るものを導き、こころざし無きものをひきずってゆく」
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正にこんな感じがするのです。志を持って、自分の行くべき道に向かって行動を起こしている時には、確かに何かに導かれると感じる事が多いです。もちろん普段でも意外な出逢いもあるのですが、先ずは自分自身がぶれないで、且つ活動してこそ、出逢いも大きな意味を持つような気がします。このセネカの言葉は、いつも心のどこかに在りますね。
永田錦心も鶴田錦史も、新しい時代の中で、新たなステップを踏み出しました。明治そして昭和の戦後という時代が切り替わる時に、この二人の琵琶の天才が居たという事は、琵琶樂にとって大きな意味があったことと思います。
現在、目には見えないかもしれませんが、ここ5年程で全く新たな時代が始まっています。マーケットは一気に世界に広がり、以前では考えも出来なかった、音源の世界配信が私でも可能になりました。また旧来のように流派や協会などという小さな枠で邦楽器を演奏する必要もほとんど無くなり、若者が自由に邦楽器を手にして活動出来るようになってきました。
世界の中の日本、そして自分という視野が開けてきた事は、とかく組織や習慣に縛られやすい日本人にとって、とても大きな事だと思います。これまでの日本の体質は、どうしても保守=正統という傾向に走りがち。自分でも判らない内に小さな枠の中で優等生を目指してしまう。組織はあってよいと思いますが、引かれたレールの上に居るだけでは次の時代は創れない。次の時代を切り開くのは、どんな分野でも、何時の時代でも、別方向からやってくる人です。是非次世代を切り開く、発想、センス、技を持った若手が育って欲しいものです。それこそが永田、鶴田の願った世界であり、その志こそ継ぐべきものだと私は考えています。
芸術は常に時代と共に存在してこそ価値があります。この時代の中で新たな次のステップを踏み出して行きたいですね。

昨年の国立劇場公演 正倉院の復元琵琶を演奏
先日のNHKeテレ「100分de名著」は色々と反響がありました。以外に多くの方が見てくれていて、ありがたく思っております。今月は後2回放送があり、再放送もありますので、是非御覧になってみてください。番組HP https://www.nhk.or.jp/meicho/index.html