予感

急に寒くなりましたね。12月ですからもう当たり前なのですが、年を重ねるごとに時の移ろいに追われ、あっという間に時間が過ぎてゆくのが、何ともいえない気分になりますね。

CDの編集作業は終わりました。さすがにスタジオで取っただけあって、ギュンギュン唸るようなサワリの音がしっかり録れました。至らぬところは多々ありますが、現時点での私のそのままの姿が収録されたと思います。
何度も確認のために聞いているのですが、本当に16年前の1stアルバムが甦ってくるようなのです。何だかやっと自分を取り戻したような・・・・。

そのせいか年明けからは、ジャズメンやダンサー・パフォーマーの方、美術系の方など、琵琶弾きとしての活動の最初に関わってきたジャンルの方々とのライブが目白押しです。やっぱり一回りして、自分らしい方向に向いて来ているんだな、と感じますね。
この流れは一昨年辺りから来ていて、様々なジャンル、そしてタイプの方々との濃密なライブを沢山やりだしました。やる度に30代のあの頃の風を少しづつ感じていたのですが、その風がどんどん強くなってきているような気がします。

毎年、自分らしい仕事をしたいと思い、自分がやるべき仕事、自分に似合う仕事を求め選択してきました。中にはお断りしたものもありますし、なんとなくフェードアウトしていったものもありますが、だんだんと自分の中が整理されて、自分にしか出来ない活動になってきたと感じています。まだもう少し自分の中で整理したい所もあるのですが、以前先輩から頂いた「琵琶ではなく、塩高で呼ばれるようになれ」という言葉を胸に、これまでやってきて良かったと思っています。
プロの琵琶奏者として活動を始めて20年。やはり私はお稽古事の世界にはとても居られないし、声をメインとして弾き語りでやってゆくタイプでもありません。私は歌手ではなく、プレイヤーなのです。勿論ショウビジネスの現場は心底似合わない。曲から舞台から自分で創り、あらゆるジャンルのアーティストと共にパフォーマンスするアートスペースが一番しっくり来ます。一回りして、そんな自分の居るべき場所にに戻って来た感じですね。まあ昔と違うのは、レクチャーの仕事が自分に合うということが良く判ってきたということでしょうか。生徒を取って個別に指導するのは相変わらず苦手なのですが、文化としての琵琶楽を幅広く色々な場所で紹介してゆく仕事は、自分の天職だと思っています。

そして最近嬉しいのは、共感できるものを持った人との出逢いですね。自分が自分らしくなってくると、自分の核にあるもの、ベースとなるものが浮かび上がり、しっかり自分で見えてくるので、そこの部分でピンと来る人が集ってくるのです。それだけ自分に素直になってきているということでもあるのでしょう。自分にとって一番心落ち着き、且つワクワク出来る場所。そういうところを共有できる仲間というのは嬉しいものです。単に音楽というだけでなく、自分の中での色々な面での、共感を伴う出逢いは人生の中で宝ですね。

2017年4月の日本橋富沢町樂琵会にて、尺八の吉岡龍見氏、能舞の津村禮次郎氏と共に

年内はまだ色々と演奏会がありますが、定例の琵琶樂人倶楽部のほか、今月の日本橋富沢町樂琵会では今年も能の津村禮次郎先生をお迎えして開催します。今回は私の樂琵琶独奏曲「春陽」で舞ってくれるとのこと。舞台「良寛」のあのラストシーンが甦るというわけです。津村先生の舞を間近で観ることが出来る、滅多に無い貴重なひとときです。またこの時には筑前琵琶の平野多美恵さんと私が作った薩摩・筑前によるデュエット「静~緋色の舞」の初公開もあります。是非ご参加下さい。

CDを作ったことで、私がもっと私になってゆく。そんな予感がするのです。これからが楽しみになりました。

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