琵琶奏者という仕事Ⅱ

梅雨の時期は弦楽器にとって最悪の時期なのですが、とにかくこの時期は本当に忙しく飛び回っています。
鹿児島に続き今日から大阪・京都の演奏会に行くのですが、皆様の協力もあり、薩摩琵琶と樂琵琶の両方を聞かせることが出来るのが嬉しい進化です。分解型のデビューなのです!!

今年の暮れから年明けに向けて薩摩琵琶のCDを作ろうと思っています。タイトルは「沙羅双樹Ⅲ」にする予定です。器楽としての薩摩琵琶と、弾き語りという従来からの形とモダンスタイルという両面を出していこうと思っていますが、弾き語りに関しては、まだ従来の節を乗り越えるところまでは至ってないので、現時点での私のスタイルを入れたいと思います。

私もいい年になってきたので、そろそろ一つ目標を決めて、自分のスタイルを示したいと思っています。作品・技術・活動など一番良い所に持っていけるように、目標となる地点を定めて、そこに向かって行くつもりです。その為にも、自分に合うものを選び、合わないものはなるべく避けて、自分の納得するものをやっていきたいです。
色んなお話を頂いたり、お仕事も様々させてもらっているのですが、そこに甘えることなく、地道に我が道を進んでいかないと、目標から逸れてしまいます。ポジティブに関われる仕事にどんどん特化して目標を目指して行きたいですね。

実は先日、ここ数年関わっていた会から抜けました。この会でやっていた内容は、私には大変興味のあるものであり、意義のある仕事でしたので、それなりにがんばっていましたが、なかなかか判ってもらえない部分があり、今後ストレスになることは判りきっていたので、自分のこれからを考えると離れるしかないと判断しました。内容が興味深いものだっただけに残念でしたね。

まあ何事も順調という訳には行きませんので、自分の目標に向かってネガティブな要素のあるものは、なるべく避けてやって行くしかありません。今思えば、こういう難しい状況があったからこそ、かえって見えてきたものもあり、自分の行くべき道が更にはっきりしたとも思えます。やはりプロとして生きている人間は、アマチュアと組んではいけないということです。まだまだ修行が足りません。良い勉強をさせて頂きました。
とにかく日々喧騒波騒の中に在っても、自分の道をしっかりと歩んで行く。これに尽きます。今後も淡々とやってまいります。

三倍音ライブ 田中黎山氏・灰野敬二氏と

琵琶は三味線やお筝のように組織も無いし、マーケットも無いので、仕事は自分で開拓して行くしかありません。昔から言っていますが、琵琶を生業にするということはベンチャービジネスを立ち上げるのと同じですね。作品制作、運営、経営、広報etc.何から何まで自分でやっていくしかありません。
また個人芸ですので、一人で舞台を張れない人は生業にはして行けませんね。つまりはソリストとして生きてということです。サイドメンとして生きてゆくのは琵琶の場合、楽器の特性などを考えるとほとんど可能性が無いのです。まあ演歌歌手のバックバンドで弾く程度でしょうか(私には死んでも出来ない仕事ですが)。
つまり自分独自の主張を持って、それに評価を頂いてゆくのは、なかなか道が狭く難しいというのが琵琶奏者としての現実です。私は活動の最初から、全ての仕事で私が作曲したものをやらせてもらっているので、本当に幸せな事だと思っていますが、それでも上記の会の様にろくに評価してもらえないという現実もあります。

邦楽の若手の中にも良い演奏をする人が出てきたように思いますが、生業としてゆけるかどうか、そればかりはその人の音楽力と人間力にかかっています。楽器や歌が上手かどうかという事ではありません。琵琶は珍しい楽器であるというのもある意味幸いしていますが、「珍しい」や「渋い」などというものに寄りかかっていたら、次がありません。それは音楽を聴いてもらっているわけではないからです。初めて聴く人に圧倒的な印象を与え、虜にする位でないと・・・。それが琵琶奏者という仕事なのです。

さて愚痴をつぶやいている間もなく今日はもうこれから関西へと向かいます。前回もお知らせした。大阪ブリコラージュ、京都ラ・ネージュでのサロンコンサートです。
是非是非お越し下さいませ!!

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