

裏側を観ると見事なツートンカラーになっています。接合部分も木部に負担の無いように、一部目の方向を変えた部分を挟んであります。この琵琶は、今まで塩高モデルの中型2号機として使っていたものを半分にカットして組み立ててもらったものなのですが、海外で使うことを念頭においているので、象牙は一切使わずに、糸口や月マークの所は貝を使って作ってもらいました。
現在、海外では象牙の輸出入が禁止されているのはご存知だと思いますが、最近では、象牙の装飾があるヴァイオリンの弓が空港で没収された事件などもあり、大変厳しくなっています。また木材に関しても、今まで大丈夫だったローズウッド全種がワシントン条約によって輸出入に関し規制がかかってしまいました。これまでハカランダと呼ばれるブラジリアンローズウッドは駄目でしたが、ローズウッド全種に規制がかかったことで、ギターメーカー等は大慌てになっていまして、メイプル材を焦がして黒くして、ベイクドメイプルという名前で指板に使ったりしています。かえって音の反応が良くなったという評判もありますが、なんだか大変な時代になりました。まあまだローズウッドはレベル1という事で、正式な証明書があれば輸入できるそうですが、材料の高騰は致し方ないでしょうね。
そもそもギターの最大大手ギブソン社が、違法に伐採されたエボニー(黒檀)とローズウッドを買っていたことが露見して、FBIに立ち入り捜査をされて、全ての材を没収されるという事件が発端なのです。簡単にいうと不法に伐採した高級木材を売りさばくマーケットを取り締まろうという訳です(ギャングの資金源になっているという話も聞きます)。
象牙はもう使うこと自体が世界的にみて倫理的にも問題があるといえますが、薩摩琵琶(特に錦琵琶)の様に糸口に大きな象牙の塊が付いている楽器は、今後海外へ持って行くのは事実上無理でしょうね。今は人工象牙の研究が進んでいて、かなり質のよいものが出来つつあると聞いていますが、今後は確実に人工象牙が主流になって行くでしょう。昨年は、海外公演時に標準サイズの琵琶を持って行ったのですが、ひやひやしながら運んでいました。これでひとまず安心です。

ちょっとピンボケで申し訳ないのですが、今回は糸口の土台に黒檀。その上にスネークウッド、そしてさわりの部分に貝を使ってもらいました。覆手(テールピース)の所も、絃を留める部分が貝で、先端はスネークウッドです。ボディーの横に走っている白い線の部分はプラスティックです。
私は元々第一の駒(フレット)には象牙を使っていないので、これで完全な象牙レスの仕様になりました。今後の他の琵琶も随時このスタイルに変更してゆく予定です。
とにかく琵琶はその形態から、いつも飛行機で楽器を運ぶのが大変で困っていたんです。中にはクッション材でくるんでソフトケースのまま貨物に入れてしまう「つわもの」も居るそうですね。アマチュアの方ならどこか壊れて演奏できなくても「ごめんなさい」で済みますが、私はそうはいかない。いかなる理由であれ演奏会が出来なくなったらプロとしてお終いですので、私は飛行機に乗る場合、国内でも海外でも必ずチケットを2枚買っていました。しかしながら海外便などではカウンターで色々と説明し、更にまた機内に入ってからが大変で、CAの人に何やかんやと言われて、なかなか判ってもらえずに、それはそれは多大なストレスでした。昨年はトリニダードトバゴやコロンビアといったカリブ海地域に行ったので、言葉もろくに通じずに本当に参りました。
まあ海外便で貨物に預けるのはどこに持っていかれるかわからないというリスクもあるので怖いですが、今回はまたケースも精密機械を運ぶ時に使うprotex
COREというかなり強力な特殊ケースを用意しました。このケースでしたら国内の宅急便でしたら運んでも大丈夫。ただ送った先で組み立てても安定するまでに時間がかかるので、前の日に現地入りしていないと難しいですが、いつものソフトケースも入るサイズの大型ケースになっていて、とりあえず国内はこれで安心です。しかしかえってホテル代のほうが高くつきますかね・・・・?。
今回は表板を交換したこともあって、音はすっかり若返って、出来立てほやほやの感じになりましたが、さわりの調整も終わり、これから育てていくのが楽しみです。

これで我が家の琵琶は、標準型の樂琵琶が一面、塩高モデル樂琵琶が二面、薩摩の大型塩高モデルが二面、中型塩高モデルが二面、標準サイズが三面、そして平家琵琶というラインナップになりました。
私は色んな形での演奏が多く、洋邦問わず様々な楽器との共演はもとより、オーケストラや舞踊、演劇等々、ジャンルを問わず演奏会が立て続いていますので、中型・大型・樂琵琶の各塩高モデルは全て舞台で日々大活躍!!。どの琵琶も現役でフル回転しています!!
新しい相棒も来たし、これではまた新たな曲が生まれることでしょう。年末にはNewCDの製作も視野に入れて、これからまた作曲に演奏に精出しますよ。
乞うご期待!!!!