このところ何度もお知らせしているのですが、2月5日に練馬豊島園近くの季楽堂にて、尺八のベテラン吉岡龍見さんと私とのユニットEclipseの旗揚げライブを開催します。

Eclipseとは武満徹さんの作曲した琵琶と尺八の為の作品名でもあるのですが(武満さんの作品はカタカナの「エクリプス」)、この組み合わせは邦楽史上初のコンビネーションでした。今まで出逢ったことの無い二つの邦楽器を組み合わせた武満さんは、さすがに鋭い感性といわざるを得ませんね。
この曲を初演したのは吉岡さんの師 横山勝也先生と、私も少なからず縁のある鶴田錦史先生。ちょっとおこがましいとも思いましたが、この程「Eclipse」の名前で組んで演奏活動をやっていこうということになりました。
ただこのユニットではあえて武満さんの曲はやりません。武満さん、そして両師匠の志をついで行くのが主たる理念であり、形を継ぐ事を目的としていないからです。あくまでスタイルは自分達で作り上げる。これが我々の役目だと思っています。世の中には形を守ることに固執して、その志を忘れている例が多々あります。邦楽会においても大変残念な状況であることを考えると、やはり我々はその志こそ継承すべきだという想いが沸きあがるのです。
明治期に新時代の琵琶楽を創り上げた永田錦心の志は、今や忘れ去られています。新しい時代のスタイルと感性を自ら築き上げ、更に次世代の者に「学ぶべきは西洋音楽であって、それを巧みに取り入れ、琵琶の特質と調和させたならば、一つには琵琶を音楽として世界化せしめ、且つ滅びんとする琵琶に新生命を興へ得るだろうと思う」と熱い言葉を残し、若くして逝った永田錦心の志を、私は決して忘れる訳にはいかないのです。先人の目指した世界を追及することこそ真の継承。創られたものの表面をなぞっているだけでは継承とはとても云えません。
このユニットでは古典と現代を行き来するプログラムを構成します。尺八は先ず古典本曲が基本。薩摩琵琶はまだ歴史が浅く古典曲といえるものが無いので、「弾き語り」という日本琵琶楽古来のスタイルを継承すべく私の書いた弾き語り曲を入れます。勿論樂琵琶による古典曲も演奏します。そして更に次世代へと受け継ぐべく、新作のデュオ作品等も入れて「創造と継承」を軸に展開してゆきます。
今回は吉岡龍之介君もゲストに加わり、古典から現代まで多彩な世界を聞いていただきます。是非お越し下さいませ。
2月5日
午後2時開演
場所:豊島園駅から徒歩7分 けやきの森の季楽堂 http://www.kirakudow.jp/
料金:2000円
問い合わせ:TEL 03-3992-7022 E-mail info@kirakudow.jp
オフィスオリエンタルアイズ orientaleyes40@yahoo.co.jp

形をなぞっただけで、お上手を褒めあっていては、邦楽・琵琶楽は本当に絶えてしまうでしょう。型にどれだけの意味と中身があるかを教えず、勉強もしなかったら邦楽の深遠な魅力は伝わらない。所作一つとってもそこには日本文化の歴史と洗練がそのまま詰まっているのに、そういう文化の根本を教えず、更には教える側の師匠すら、その意味が判っていないとしたらもう悲劇です。
琵琶楽を勉強するという事は、単に琵琶を弾いたり歌ったりすることではないはず。平安時代から続く世界一長い歴史を誇る琵琶楽を勉強するのですから、歴史や宗教、文学、芸能、それら日本が育んできた尊い文化なくして演奏は出来ないはずです。
琵琶樂人倶楽部看板絵 鈴田郷作品
私が10年続けている琵琶樂人倶楽部では、「文化としての琵琶楽」をずっと標榜し、現代に生きる若者に、格好良いとか渋いとか、そういう表面的なものだけでなく、琵琶楽のこの深さを感じて欲しいと思い続けてやってきました。是非次世代を担う琵琶人には、日本の誇るべき豊かな歴史と文化をベースに、次世代の琵琶楽を創って行って欲しいと思います。
永田錦心の志を実践するのなら、この素晴らしい歴史を誇る日本の文化の最先端を持って出てゆくべきでしょう。そして同時に「これが1000年以上の歴史を誇る日本の古典です」と堂々と琵琶楽のレベルの高さを世界に示して欲しいものです。
けっして邦楽器でロックやポップスをやる事が最先端ではありません。逆に古い。既成の洋楽のフォーマットに乗ってドラムやベースなどと一緒になって、格好良いなんて言っているうちはただの賑やかし。何も残らない。海外の人が憧れ、真似したくなるくらいの音楽を日本から発信して行きたいものです。私はずっとそう思ってやってきました。
演奏会に是非是非お越し下さいませ。お待ちしております。