このところ何度かお知らせしている、灰野敬二、私、田中黎山による「三倍音」のライブがいよいよ迫りました。

このトリオでは灰野さんはポリゴノーラという打楽器を演奏します。この打楽器は広島大学の櫻井直樹教授が開発した、二次元の倍音を奏でる不思議な楽器で、これまで一昨年より勉強会をかさね、皆であれこれ意見を交し合って、櫻井先生が作り上げました。これまでライブやレコーディングをこのトリオでやってきましたが、ちょうど櫻井先生監修のCDが出る頃でもあり、良いタイミングのライブです。
こちらは先日のレコーディング風景。芝公園のサウンドシティ別館のスタジオでの録音でした。即興演奏ですので、15分のものを2本取りましたが、結局一本目が良いという事で、スリリングな演奏の方が採用となりました。
灰野さんとはここ数年色々とやり取りをしながらやってきたのですが、学ぶところも多々あって、いつも濃い時間を頂いています。話をしていると自分の原点が甦ってくるようです。それだけ灰野さんはピュアな状態でいつもいるということですね。きちっと何でも言い切る人であり、且つそれだけの生き方をしている。琵琶人ではこんな筋の通った人は居ません。
人間は色んなものに振り回されます。一般にお金は一番の例かもしれませんが、音楽家でもそれまでストイックだった人が、急に肩書きやら何やら看板出すようになる例もありますね。結局俗な部分が今迄隠れていただけの事なのだと思いますが、そんな姿を見るとがっかりします。
我々舞台人はその場の舞台が全て。本来肩書きなど全く通用しないところに身を置いているのが舞台人のはず。しかし現実は○○流名取だの、何とか賞だの、格が上だの下だのと虚勢を張って、音楽を突き詰めてゆく事をすぐに怠る。いつまでもこんな調子で、邦楽はいいのかな・・・・?。
私自身も、もっとブラッシュアップして行きたいです。

私は灰野さんと会うと、いつも自分の詰めの甘さを我が身の内に感じるのです。もっと自分に素直に、純粋に成り切ろう、何の装飾も虚飾も無い、無垢の自分自身に立ち返ろうという強い意志が沸いて来ます。会うだけでこうい気付きを与えてくれる人は少ないですね。
ここ数年で私は自分の琵琶弾きとしての活動の原点に立ち返って、一番自分らしい自分の音楽をやろうという気分になってきました。灰野さんと出逢ったのも、自分がそういう雰囲気になってきたからでしょう。今までの活動を見直して、自分が本当にやる音楽をどんどん厳選して来ています。即興演奏のライブを再開したのもその一つですが、ここ数年はその想いがかなり強くなりました。結果的に付き合い人も変わってきましたね。

岡田美術館にて
自分の出す音は自分だけが出せる。他人には出せない。他人と同じ音楽をやる必要は無いし、比べる必要も無く、同じ価値観を持つ必要もない。その音楽を支持するのはいつの世もリスナーであり、舞台とリスナーの間には、余計な夾雑物はあってはいけない。全くもって必要ないのです。

12月5日(月)明大前キッドアイラックアートホール 19時30分開演です。
生ぬるいものは性に合わない!!!