先日、久しぶりにLive Viewingでオペラを観てきました。昨年秋辺りからレコーディングやら演奏会やら、とにかく忙しくしていましたので、本当に久しぶりになってしまいました。

今回はいつものMetではなく、イギリスのロイヤルオペラハウスのもので、中継による映像。といっても時差がありますから結局録画してあるのですが、映像の乱れもちょっとあったりして、臨場感はなかなかです。一日しか流さないというのも本番を観に行った感じがして良い気分なのです。
今回の演目は私のようなワーグナー初心者でも判り易い「さまよえるオランダ人」。呪いで7つの海をさまよい続けるオランダ人の話です。短い作品ですので、途中休憩も無く一気に楽しめました。さすがワーグナーの作品だけあって、どこまでもダイナミックなオケと、フルパワーで歌い続ける歌手達がもの凄く、十二分に堪能しました。
ブリン・ターフェル
今回のキャストは以下の方々。オランダ人:ブリン・ターフェル、オランダ人の宝に目がくらむダーラント船長にはピーターローズ、船長の娘でオランダ人とボーイフレンドとの板挟みになるゼンタはアドリアンヌ・ピエチョンカ、ゼンタの恋ボーイフレンドのエーリクにミヒャエル・ケーニヒ。皆さん素晴らしい実力を持っていて、演技にも歌にも余裕がある。当たり前ですが、やはり世界の一流は凄いですね。
舞台はMetと随分感じが違っていて、あまり派手な演出も無く、私の印象ではちょっと地味な位に感じました。まあMetを観慣れているせいもあるかと思いますが、煌めくようなスター性を前面に出すMetに対し、ロイヤルやパリオペラ座のオペラは物語全体を表現して行く感じです。だからスター歌手が綺羅星の如く・・・・、というのはないのです。
今回オランダ人をやったブリン・ターフェルは、かつて(89年)このブログでも良く登場する、ディミトリー・ホロストフスキーとBBC国際声楽コンクールで優勝を争い、1位2位を分け合ったという方。道理で声が豊かなはずです。どうしたらああいう声が出るんでしょうね。ホロストフスキーもそうですが、実に魅力的な声をしています。多少なりとも声に携っている者として憧れますね。勿論他の出演者も皆レベルが高く、中でもゼンタの役をやったアドリアンヌ・ピエチョンカ(右写真)は見事なまでの歌いっぷりでした。
全体に地味目な感じではありましたが、私はロイヤルオペラハウスの演出はなかなか良いと思いました。過度な装飾が無く、物語に集中できますし、スター歌手云々というより中身で勝負、という所に大変好感が持てます。勿論Metのきらびやかさは大変計算されていて内容が損なわれるようなことはありませんので大好きなのですが、ヨーロッパのオペラもこれからどんどん観て行こうと思っています。
久しぶりのオペラを観て思うのは、やはり「舞台」です。私は音楽家ですので、演技したり演出したりすることはほとんど無いですが、舞台での姿にはやっぱりこだわりたいですね。邦楽では、時々舞台袖から出て来る歩き方を見るだけで幻滅してしまうような若手の舞台が少なくないです。残念でなりません。40も越えればもう直しようもないですが、若手には是非日本の美である所作を身に付けて、美しい姿で演奏してもらいたいものです。相変わらずパフォーマンスをやりたいのか、音楽をやりたいのか判らないような舞台も多いですが、派手な化粧や衣装よりも、先ずはしっかりと音楽を届けるという姿勢は第一に持っていてもらいたいものです。
充実のオペラを観て、気持ちも引き締まってまいりました。