声を観るⅡ

馬場朗読会

先日、「渡辺智明 表現読み独演会」に行ってきました。いわゆる朗読会です。以前からやり取りをしている仲間の馬場精子さんがゲストで出演したのですが、馬場さんの朗読はCDでは何度も聴いているし、本人にも何度も会っているのに、まだ実際の舞台を観ていなかったので、今回は楽しみにして行きました。

馬場精子馬場さんは京都の方で、万葉集や源氏物語を奈良・平安時代の発声とアクセントで読まれる方です。彼女の朗読ではまだ近現代の作品しか聞いたことは無いのですが、是非古典ものも聴いてみたいです。これまで宇治の源氏物語ミュージアムなどで上演。TVなどでも放映されています。
私は今、日本書紀に書かれている和歌を音楽化してみようというプロジェクトに関わっていて、琴歌譜を読み解きながら、当時短歌がどのような音程で読まれ、歌われていたかを探っている最中な事もあって、馬場さんの活動にはとても興味があるのです。馬場精子HP http://ameblo.jp/readinghitoha/

馬場さんはとにかく声が良い。何とも魅力的な響きを持っているのです。伊藤哲哉先日も生の声を聴きながら、その声質に魅了されました。朗読の技術も凄いのだと思いますが、あの声は彼女の独自のものですね。唄い手にしても朗読家にしても、もともとの声質に魅力があるというのは素晴らしい資質だと思います。
私の周りには何故か声に魅力のある方が何人も居ます。「良寛」の舞台で御一緒させてもらっている伊藤哲哉さん(写真右)等は正に声の魔術師みたいなもので、基本の声が低く深~い豊かな響きなのに加え、役者としての声のあらゆるテクニックも兼ね備え、一人舞台などを観ていても、1時間等あっという間に経ってしまう程に観客を惹きつけます。特に「耳なし芳一」の舞台は凄いです。
来年はしっとりとした語り口が素晴らしい櫛部妙有さんとも御一緒するし、これまでも伊藤豪さん、三園ゆう子さん、竹崎利信さん等々素晴らしい声を持った方々と共演してきました。日蓮上人なども魅力的な声の持ち主だったそうですが、人を惹きつける方は皆さんは、声に大変に個性と魅力がありますね。

一般的に、通る声、練れた声、声量等々、声に関しては色々な事を言われます。生で聴かせられなければだめだという人も居れば、マイクテクニックも大事という人も居ます。生でやったら素敵なのに、マイクの使い方が下手で、大きな会場では全然ダメだったという例もあります。マイルス・デイビスなどはマイクという新時代の機材を最大限に生かして新しいスタイルを作りました。エレキギターだって同じ事で、もう生ギターとは全く違ったテクニックが必要なのです。私は生声でやるのが一つの信条ですが、大ホールでマイクやピックアップを通しても、しっかり表現できるように機材に対する知識もそれなりに勉強しています。時代の中に在ってこその舞台であり、私はその舞台で生きているのですから・・・。

ishidataisho

とはいえ、私は度々このブログにも書いているように、声や歌や言葉というものに関して今一つ解決されない部分を自分の中に感じています。
そんなこともあり、声そのものに素晴らしい質がある方にはある種の憧れが有ります。私の声がどんな風に聴衆に感じてもらえているのか判りませんが、少なくとも楽器と同じレベルで、自信を持って演奏出来なければ、プロの舞台では通用しません。何事もそうですが、楽器でも声でも一流を目指すのなら、人生賭けてやらなければ質の良いものは出来ません。私はどうにも不器用なので、声も楽器も両方やるというのはなかなか難しい。
多少上手に語りが出来ても、ただ唄いたいから、何ていう安易な発想ではお稽古事の延長になってしまいます。

profile10-s少なくとも私は自分の考える音楽が在り、それを舞台で表現しているので、声を使うにしても最終的には旧来の琵琶の弾き語りの形ではなく、全く独自の形で言葉を扱い、曲を作って行くと思います。先ずは器楽としての琵琶楽の確立が一番の命題ですが、その先には声と琵琶という普遍的な組み合わせも当然見えて来ています。今生でそこまで行きつけるかどうか判りませんが、素晴らしい魅力的な声を持っている諸先輩方々と、お付き合いさせて頂くのは、本当に勉強になります。世界もぐっと広がりますね。

声は音楽の原点でありますし、声こそはその人の個性を一番現すものとも言えます。それだけに技術でこねくり回したような歌はけっして心地よ良いものには聴こえません。虚飾を配し、その人の等身大の声が口から流れ出てこそ、何かが伝わって行くのだと思っています。

馬場さんの声を聴きながら、色々な想いが沸き起こりました。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.