豊後路をゆく

近江に続き、ツアー後半は大分県の臼杵で演奏してきました。

20130518

今回は語りの首藤順子さん(ひいらぎ会)の招きだったのですが、10数年前に大分能楽堂で寶山左衛門先生と御一緒した時に、首藤さんも語りで参加されていて、そんな御縁で今回声をかけて頂きました。場所は多福寺という禅宗のお寺。お客様も120人を軽く超える方々にお越しいただきました。

演目は、首藤さんの語る平家物語に琵琶を入れたのですが、その他に独奏で「観音華」をぜひやって欲しいというリクエストでしたので、久しぶりに演奏してきました。熊野の補陀落渡海を描いたこの曲は十句観音経も入っていて、お寺での演奏会にはぴったりの選曲でした。最後は定番の「開経偈」を首藤さんの独吟に続いて唄わせて頂きました。

      

臼杵といえば石仏が有名ですが、この辺りは豊後の小京都とも言われ、近江と同じく古いものが数多く残っています。街並みも大変風情があり、私のような都会人には、色々と見て回るのが楽しかったです。

今回のツアーは割と時間に余裕があり、リハーサルの後などはたっぷり時間があったので、石仏や周辺の里山をゆっくりと散歩してきました。10数年前にも来たのですが、以前は行けなかった満月寺や最上寺なども回り、途中で「一無彩」という良い感じの喫茶店でお茶したりして、ちょっとゆったりしてきました。こうしたふと気の休まる時間があるというのは、音楽家にとっては嬉しいことです。舞台は緊張状態にあるので、その集中力を保つにも、お散歩時間が大切です。

そして臼杵には、我が家で毎日頂いているお味噌、フンドーキンの工場があります。ここの麦味噌は最高です!!本当は工場見学までしたかったのですが、さすがにそこまで時間が取れなかった。今度行く時には是非行ってみたいです。

旅はいわば日常からの解放。知らない土地で、その地の人達と出逢い、その前で演奏する。それはなかなかスリリングなのです。そしてワクワクとして楽しい。都会に居るだけだと、私のような人間は気が付かないうちに色々なものに囚われてしまう。のんびり生きているつもりでも、何時しか小さな世界の住人に収まっていることに、はっとすることもしばしばあるのです。

心が小さな世界に囚われていると、そのまま音楽に出ます。勿論音楽も様々なものに触れていないと、現代の中で訴えるものも出てきません。社会とかけ離れ、オタク状態に居たら、結して良い音楽は生まれないのです。

旅をして、多くの人と出逢い、日常とは違う空気を吸い、色々な文化や風俗に触れる。時々こんな体験が出来るというのはとても素敵な事です。色々な土地の風情を感じてこそ、琵琶は鳴ってくれるのです。琵琶はペルシャの彼方から、シルクロードを渡り日本に辿り着いた楽器。日本でも琵琶法師たちが琵琶を担いで色々な所を旅しました。琵琶は旅をする運命にある楽器なのかもしれません。

biwa iroiro

これからも私の旅は続くでしょう。それは琵琶に縁のある者の運命なのでしょうね。この運命をじっくりと楽しみたいと思います。

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