先日、我が家の近くの音楽サロン「かんげい館」にて行われた、ViとPianoによる演奏会に行ってきました。タイトルは「Bell Epoque」、その名の通りプログラムは1曲を除いて全てフランスの作曲家の作品でした。なかなかレベルの高い演奏で、久しぶりにフランス音楽を堪能しました。
演奏は、上手というレベルをはるかに超えていて、時折りその音色に「官能」を感じるほどに充実したものでした。楽曲はどれも素晴らしいものだし、何よりも演奏から「どうだ!」みたいな気負いを感じなかったのが良かったです。演奏者の音楽に対する姿勢と、二人の人間性が素直なのでしょうね。聞いていて、自然と音楽の快楽に身を浸している自分に気が付きました。素敵な時間でしたね。
勿論その先の問いかけもあります。彼らはこれからもっと考えるべき事が出てくるでしょう。「何故フランス音楽をやるのか」「日本に生まれ育ち受け継いだものは何か」等々色々な事に立ち向かうことになると思います。またそういうことに立ち向かわないようではそれまで、とも言えます。しかし先ずはこのレベルを持っているという事は素晴らしい事です。ここから見えることもあるでしょう。10年後20年後の演奏を是非聞いてみたいと思いました。
Viの方は弱冠20歳の方でしたが、明治以降百数十年の洋楽教育は、20歳の日本人にこれだけの技術をもたらしたか、と感慨深く思いました。それに比べ琵琶は日本のものでありながら水藤錦穣以来、弦楽器奏者として世間の誰もが認めるような人はどれだけいるのだろう?
筝曲では「六段」「みだれ」「春の海」「千鳥の曲」等名曲があるものの、世界に向けて発信できる名曲が邦楽には少な過ぎる。日本の伝統も判るし、勿論しっかりと受け継ぎたいし、洋楽に迎合することも全く無いですが、これからは次の時代を見つめて、小さな意識を抜け出し、一民族音楽ではない、世界視野の琵琶楽を作るべきだと思います。演奏と共に作曲がこれから重要になって行くでしょう。とにかく今のレベルではどうしようもない。
演奏を聞いて、色々なことが想起されましたが、それにしても素晴らしい音楽に浸ると、心が豊かになりますね。音楽が深く心に届き、煌めきのようなものがずっと体内に漂っているのを感じます。芸術・音楽の「快楽」は、ネガティブな気持ちを消し、あらゆる所に想いを行き渡たらせ、創造力を刺激し、大きな心で生きて行く源となってゆきます。何物にも代えがたいものですな。
皆さんも芸術・音楽の豊饒なる「快楽」を味わってみませんか。