先日エドワード・バーンジョーンズ展を観てきました。説明の必要も無いと思いますが、19世紀半ばから後半にイギリスで活躍した方です。ラファエル前派、象徴主義と言われています。ちょうど年代としては明治維新直前の生まれなので、海を隔てたフランスではドビュッシー等の印象派が活躍した時代と重なります。そして薩摩琵琶の誕生とも時を同じくしているのです。
ジョーンズは聖職者を目指していたというだけあって、その作品には全体にとても清潔感があります。淡く包み込むような光、自然な輝きを見せる色彩、内面がそのまま表れているかのような姿、全てが魅力的です。最初はごてごてした宗教画というイメージを持っていたのですが、実際観てみると全然違いました。
どの作品にも素直なまなざしが感じられます。生々しい現実の人間の姿ではなく、象徴主義と言われるように、神話の世界を通して、人間の根元的な精神を描き出しています。またそこには、ジョーンズ自身がこうあって欲しい、という憧れと幻想が強く感じられ、美しさと共に彼の人間に対する理想が作品に現れていました。
中には現代の作品ではないかとも思えるようなものがありました。
こちらは後半の展示で特に目にとまった作品です。大きな作品なので、実物を見ないと雰囲気は判りませんが、光の表現が実に素晴らしく、観ている自分がその世界に入ってしまいそうで、とてもモダンな感じがしました。今のように、どこに居ても映像や音が容赦なく襲いかかるほどに氾濫している時代と違って、当時はジョーンズの作品が人々に大きな驚きと感動を持って鑑賞されていたのではないでしょうか。
ジョーンズの凄い技術は後になってから感じました。見ている時にはほとんど感じなかったのです。当たり前ではあるのですが、ものすごい画力です。最初に技術を感じさせないということは、音楽でも美術でも確実に描く世界を表現しているという事だと思います。
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