真夏の夜の夢2011

毎日、色々な事が起こり、過ぎ行き、そして焦げてしまうような日差しが容赦なく降り注いでいますが、この暑さの中、演奏活動がやっとこさ動き出してきました。

今月24日には、フラメンコピアノの安藤紀子さんとやっているデュオシリーズのライブが、渋谷公園通りクラシックスであります。このシリーズも回を重ね、やっと音楽的にも練れて来ましたが、何より一つの方向性がはっきりしてきたので、面白くなってきました。舞台全体ではまだまだやるべき事は多々ありますが、先ずは音楽的な部分を固めてゆくのが肝心ですので、中身が充実感はよき感触。  
   

リハ2この所、踊り手をゲストにしているのですが、今回の舞姫は「かじかわまりこ」さん。かじかわさんとはもう何度となく、色々な舞台で共演していますし、気心が知れていますので、とてもやりやすいです。

     リハ4

かじかわさんはモダンダンスでありながら、その枠にはまらず、とても柔軟な感性で対応してくれますので、今回の平家物語に対しても、しなやかにアプローチしてくれています。

私は琵琶ということもあり、古典を典拠にした作品が多く、古典はまた仏教の精神性を根底にしているので、どうしても仏教や歴史などへの考察が必要となります。クラシックでもバッハもモーツァルトもメシアンもペルトも、皆キリスト教があってこその音楽なので、音楽の背景に宗教がある事は何の不思議もないのですが、現代日本では極端な宗教分離政策のせいか、音楽だけを聴いてその宗教性を見ようとしないのです。残念ですね。
そういう根底の軸足を失った芸術に、私は魅力を感じません。何だか一過性の薄っぺらい流行もの、という感じがします。音楽でも何でも、自分の足元を見ようとしない現代日本人は、先ず音楽からでも、その意識を変えると良いと思うのですが・・・。

リハ5今回は、トリオによる「祇園精舎」「壇ノ浦」を中心に、私の作品「まろばし」、フラメンコの「ファルーカ」などもやります。
元々私がフラメンコギターをかじっていた事もあるのですが、フラメンコギターと琵琶には、音楽的にも奏法的にもかなりの共通点を感じていました。琵琶というある意味イメージが固まって、「平家の弾き語り、耳なし芳一」という枠を越えられない、聞く方も演奏する方も硬直化した楽器にとって、ピアノやフラメンコという一見、全くの異文化との出会いは、琵琶本来の音の魅力を新たに認識する事が出来る良い機会だと思っています。

私はやはり、琵琶本来の音の魅力をもっともっと聞いていただきたいと思ってます。唄がないと成り立たないというのは、現代の経正・蝉丸を目指す琵琶奏者 塩高には似合わない。楽琵琶からはじまる楽器としての日本琵琶楽の流れを、もっとアピールして、次世代に展開していきたいですね。
藤原貞敏が唐から秘曲を持ち帰ってすでに約1200年。弾き語りというスタイルが出てきたのは約600年ほど前から。つまり全歴史の半分もないのです。もちろん弾き語りも大変に魅力がありますし、自分でも弾き語りメインの会などもやっていますが、現在でも原初の形である楽琵琶独奏、合奏のスタイルは綿々と伝承されている事を考えれば、もっともっと琵琶本来の音色を聞かせて当たり前、と思うのは私だけでしょうか。

三味線は早い時期に、唄と楽器が夫々専門化して行ったので、どちらもかなり高度に洗練され、技術も確立してゆきました。しかし琵琶はずっと一人で二つの事をやっている為に、歌のうまい人もあまりいないし、弾く技術も何時まで経ってもレベルが上がらない。塩素だけで聴かせられるのは水藤錦穰先生位でしょうか。他の邦楽器と共演が難しいのは、楽器の構造のせいではなく、その技術レベルの低さにある事を、携わっている人が早く、正しく認識すべきです!!

さて、世間は京都の祇園祭、那智の火祭りと、夏の暑さに負けない、人間の旺盛な営みが盛り上がっています。

加茂川      祇園祭2011-3
 祭りの夜の鴨川              四条大橋に向かう祇園祭のたいまつ 

色々な事があり、少し低迷していましたが、ニューアルバムの編集も進んでいますし、演奏活動もどんどんやって行きます。古典と現代、そして次代への架け橋になるような音楽をやりたいですね。

虹

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