春の目覚め~二つの教え 

早3月になりましたね。芽吹きの季節です。私もそろそろ動き出してきました。花粉に負けてはいられません。

善福寺緑地

これから桜が盛りを過ぎた辺りからまた演奏会が続いています。5月にはメゾソプラノの保多由子先生のリサイタルが銀座の王子ホールであります。今回も有難い事に、拙作「経正竹生島」(初演)「秋月賦」を取り上げて頂きます。6月には名古屋、山形でも公演が控えていまして準備が始まりました。

保多由子先生と琵琶樂人倶楽部にて

この所、私にしては珍しく歌に縁があって、歌の曲も少し取り組んでいます。またレコーディングしていない歌の曲(弾き語りの琵琶唄ではなく)が7,8曲程溜まっていて、上記の「経正竹生島」なども初演作もありますので、歌の曲をまとめて「SongBook」みたいな体でアルバムにまとめる事も検討しています。従来の大声を張り上げるて弾き語るものではない「歌と琵琶」のスタイルを創って行くたらと思っています。

器楽に関しては新たに琵琶独奏曲も出来上がりましたし、先月Vnと琵琶のデュオ曲も1曲書き上げました。そして今は、笛と琵琶の新作に取り組んでいる所で、器楽の作品もそろいつつありますので、11枚目となるアルバム制作も視野に入れてじっくり歩みを進めてまいります。

若き日 京都清流亭にて

私は何をやるにも人より時間がかかり、何度も失敗して初めて出来上がるという大変効率の悪いタイプでして、加えて真面目に一途に精進するような性格でもありません。何時もぶらぶらと寄り道をして、ほっつき歩いて、「酒を飲むのも仕事の内」などと管を撒きながら何とか仕事するような人間ですので、一滴の湧き水が一筋の川となるが如く、ゆっくりゆっくり途方もない時間がかかるのです。それでもなんだかんだ30年程やって来て、小さな作品が積み重なり、10枚のアルバムになりました。有難い事です。2001年から音源のリリースを始め、翌年に1stアルバム「Oriental Eyes」が出ましたので、世に出始めてまだ20数年という所ですが、小さな雫も30年も溜まれば、それなりの水たまり位には成るものです。

20代の頃、作曲の石井紘美先生には本当に多くの事を教えてもらいました。中でも印象に残っている事が二つあります。一つは「実現可能な曲を作りなさい」という事。これは私にとってとても大きな指針となり、その後の音楽人生が決まったと言っても過言ではありません。私は自分が演奏するという前提で曲を書いていますが、作曲を勉強していれば、大曲も書いてみたいし、書く事で自分の満足ともなります。しかし大人数で演奏する作品は舞台には簡単にはかけられません。私がそうした作曲家のエゴのようなものに囚われずに自分の音楽をずっとやって来れたのは、作曲家と演奏家の両方をやってきた事と、この先生の教えがあったからこそだと思っています。 もう一つは「人生後半が幸せな方がいいでしょ」という事。若い頃は全くピンと来なかったですが、時間が無常なまでに過ぎ去って行くという事が解る年になってくると、先生のこの言葉がじわじわ沁みて来ます。肩書や身分みたいな浮世の幻想を自分の周りにぶら下げても鎧が重くなるだけで、本体は身動きが取れなくなってしまいます。そんなものを背負いながら生きていては人生の後半に幸せは訪れません。年が行けば行く程に身も心も軽く居てこそ自由に動き回る事が出来るのです。誇るのは自分の創って来た音楽だけでいい。私はお陰様で自分なりに少しづつですが歩みを進めて行く事が出来ました

箱根岡田美術館にて

石井先生に琵琶を勧められ、仕切り直しで始まった音楽人生ですが、先生からは音楽を超えて人生を導かれるような教えを沢山頂きました。これ迄、石井先生はじめ多くの先輩方々に恵まれたなと、今頃になってこの有難さを解って来た愚か者ですが、今後もこの歩みをのんびりと自分のペースで先へと繋いで行きたいですね。

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