詩と音楽

ちょっと間が空いてしまいました。それにしても毎日暑すぎですね。

7 arts cafeでのライブはお陰様で終わりました。今回はヴァイオリンと琵琶というコンビネーションで、凡そ琵琶=古風というイメージとは対極にあるような前衛曲や、新作ばかりを集めた会でしたので、お客様も戸惑ったでしょうね。またちょっと絃が暴れてチューニングに苦労しましたが、いろんな点で更に考えを深める良い機会になったと思っています。色んなアイデアがどんどん沸いて出てくる感じです。写真を撮っていないのですが、以前人形町楽琵会でVnの田澤先生とやった時のものを。今回もこんな感じでした。

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photo 新藤義久


私は何時も傍らに「未来ノート」と呼んでいるノートを置いています。これには何でも書いていて、年賀状の宛先から、これからリリースしたいアルバムの事、ゲストごとの演奏会のプログラム、楽器のメンテの箇所や費用、あとは購入したいもの、音楽以外の事等々色々と書き込んでいます。いつも楽器をいじる時に開いて眺めているだけなんですが、時々ふと書き込んだり、または消したりしながら、これからの事を考えてます。
活動については今が転換期だと思っていますので、最近はまたこのノートを眺める事が多くなりました。ネット配信のお陰で新作のリリースは経済的に随分と楽になりましたが、私が主催してきた小さなサロンコンサートも、これまでとは違う形を作って行こうと思っています。そんな意味でも7arts cafeはこれから良い関係を築いて行けそうな場所になると思います。
琵琶樂人倶楽部も、お陰様で最近は何とか「あがり」が出るようになりましたが、とにかく集客が優先になって、演出やプログラムで媚を売るような受け狙いの内容にすることはやりたくないですし、企画運営に気を取られて音楽がおろそかになる事も無くして行きたいのです。音楽が喰って行く為の俗芸に陥ったら、もう私にとってそんなものは音楽でもなんでもありません。今迄もかなりその辺は徹底していたのですが、今後は更に徹底して自分の音楽をやろうと思っています。「媚びない・群れない・寄りかからない」がモットーの私としては、自分の思う音楽を思うようにやって行く為にも、今後の舵取りが重要になってくると思います。

1sメゾソプラノの保多由子先生と photo 新藤義久
今とある詩を基にした作品を書いているのですが、いわゆる詩にメロディーを付けるという事を止めて、あくまで詩から受ける印象を、楽の形にするという作業をしています。そんな折、先日、国立近代美術館MOMATに行ってきました。私は美術館や博物館の空気が好きなんです。

MOMATの常設展示の中に「詩と絵画」というコーナーがあったのですが、ここに興味を引かれました。音楽にするとどうしても詩にメロディーを付けて詩が中心になって、詩に支配されてしまいがちです。しかし美術作品だと純粋にその詩の印象を表現できる。そこが良いんですよ。今、詩と音楽という分野に取り組んでいる私としては、そんな美術家の姿勢に大きなヒントを得ました。

同時に私自身、琵琶弾き語りスタイルでの演奏は、もういいかなと思っています。まあ琵琶は伝統的に弾き語りでやるのがスタンダードなので、そういう演奏を期待する声も判るし、媚を売るという事ではなく、一つのスタイルとして演奏するのも仕事の一つだと思います。だから今迄の定番のものは時と場合によりやるのも良いかと思っていますが、もう弾き語りの新作というのは創る発想が無いですね。声を使うのであれば専門家にやってもらいます。実際に、琵琶の弾き語りの曲をメゾソプラノの保多由子先生に歌ってもらったりする機会もいくつかやっていますし、自分でやるよりずっと良い感じで出来ています。声には興味がありますが、従来のあの弾き語りのスタイルは私の音楽ではありません。とにかく琵琶の妙なる音を充分に響かせて行きたいと思っています。

ひびきあう絵・みつめあう音m

今取り組んでいる作品は9月11日に新横浜のスペースオルタという場所で初演をします。メゾソプラノ:保多由子・笛:大浦典子さんと私のトリオによる演奏なのですが、それを契機として、詩・声・琵琶が皆独立して存在するような作品をこれから少し作ろうと思っています。
実はこういう作品はもう20年以上前に書いているんです。1stアルバム「Orientaleyes」に収録した「太陽と戦慄第二章」の第一章は、琵琶二面とソプラノによる作品で、両国の国技館ホールで初演しました。あの頃はまだめちゃくちゃだったと思いますが、既に自分の中にアイデアが確かにあったのです。
その時歌ってくれたソプラノ歌手 南田真由美さんが、最近こんな作品を発表しました。


ご興味のある方、是非聴いてみてください。彼女は現在、若手歌手へのヴォイストレーナとしても大活躍しています。

詩と音楽は切り離すことが出来ない程に、密接な関係にあるものです。特に日本音楽の第一号と言われている平家琵琶から、常に歌と共に在った邦楽は、詩や声といつも共に歩んできました。私はそういう中で今後の琵琶樂の発展を見据え、器楽としての琵琶樂を目指していますが、一方で邦楽と詩、そして声については、切り離しては存在し得ないとも思っています。私は歌い手ではありませんが、私なりの詩と琵琶との関わり方を示して行けたらいいと思っています。

乞うご期待!!。

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