先日改造・修理に出していた、塩高モデル大型2号機が戻ってきました。
左側写真は、左から大型1号機、2号機、中型1号機、2号機(分解型)と並んでいて、月型はそれぞれ左からプラスティック、黒檀、金属、貝となっています。ここ20年の楽器の変遷が見れて面白いです。ご覧になりたい方は是非演奏会にどうぞ。
これで私の薩摩琵琶四面のラインナップが完成しました。これに塩高モデル樂琵琶が二面加わり、総勢6面の有志達(右の写真)が私を支えてくれているのです。駒などのメンテナンスは随時やって行きますが、もう大きな改造は必要無いですね。これで海外にも安心して持って行けます。
私はCDを出す度にその音楽に見合う楽器をしつらえて8枚のCDを作りました。現在までにネット配信のみの作品集アルバムを入れるとアルバム10枚、教則DVD 1枚をリリースしています。その全てのアルバムはこの塩高モデル無くしては創り得なかったと感じています。
1st「Orientaleyes」は大型1号機、
2nd「MAROBASHI」は大型2号機、
3rd「沙羅双樹Ⅰ」は中型1号機、
4th「流沙の琵琶」は塩高モデル樂琵琶1号機、
5th「沙羅双樹Ⅱ」は中型2号機(まだ分解型に改造する前)、
6th「風の記憶」は塩高モデル樂琵琶1号機、
7th「The Ancient Road」は塩高モデル樂琵琶1号機と2号機、
8th 「沙羅双樹Ⅲ」は塩高モデル中型1号機、大型2号機で、それぞれ録音しました。3rd辺りまでは、4・5の絃がちょっと細めで、15番くらいでした。5thでは17番、8thでは19番とだんだん太くなって行きました。(2枚の作品集アルバムは、1st~8thまでの間に録音をしたものの、企画や権利関係でCDに収められなかった作品を集めています)
これらの琵琶は、私の同志であり、もう体の一部ともいえる存在ですね。後20年程はこれ迄以上に暴れまわりたいので、今後もガンガンと弾き倒して行こうと思ってます。それにしっかりと答えてくれる、頼もしいやつらなのです。
六本木ストライプハウスにて、坂本美蘭(パフォーマー)、藤田晄聖(尺八)
日本人は変化に対し保守的な人が多く、全体として一度出来上がったものを変えることに大変消極的ですが、私はこれからの時代、象牙やべっ甲、動物の皮等を使う事には反対です。どういう状況で象牙が取られているか、現代に生きている人なら判らないはずはありませんし、世界の人々の感覚を考えれば、新たな素材で新たな時代の良い音を追求すべきだと思います。私はもう何年も前からネット配信を世界に向けてやっていて、海外の方が主に私の作品を聴いていてくれるていますが、これだけ世界と繋がっている時代に、芸術に携わっている人間が視野を世界に向けず、50年前の村の中から意識が出ていないというのは良い姿とは思えません。
音楽はどんなものでも社会の中で音楽を響かせるという事が、一番の基本。それが民族音楽であればその地域の生活と主にあっただろうし、現代の様に世界に音源が流れ、演奏会も世界に飛び出して行く時代にあっては、「社会」が既に「世界」という状況なのです。今は経済だけを見ても中国やアメリカの動向が直接日本の暮らしに関わってくる時代です。いい加減に「日本の中の私」ではなく、「世界の中の私」という感覚を持たなければ音楽はやって行けません。そんな時代に在って、世界の中の私は何者なのであろうか、日本の歴史の最先端にいる自分はどんな音楽を奏でるのか、そういう所を考えるのが芸術家ではないでしょうか。今は自分の部屋に居ながら、世界の情報が入り、世界中からメッセージが飛び込んでくる時代です。自分の中の小さな世界で音楽をやっていてはオタク以上になりません。
音楽は時代と共に在ってこそ音楽であり、楽器は音楽と共に在ってこそ、生きた音色を奏でてくれるのです。今に生きる人、次世代を生きる人に向けた感覚がなくなったら音楽は届きません。私は6面の塩高モデルを弾き、琵琶の音色を次世代に、次々世代に届けたいのです。