成就する想い

今年は5月頃からずっと演奏会続きで、様々な場所と形で演奏させてもらいました。こうしてご縁を頂くのは実にありがたいこと。いつもながら生かされているという実感を持ちます。牛の歩みのように少しづつですが、想うことをやってこうして生きているのですから、実に幸せなことだと思っています。逆にこの幸せを感じられなくなったら、ちょっと危ないですね・・・。

6
六月、能楽師の津村禮次郎先生、中世文学研究者の原田香織先生、フルートの久保順さんと、井上円了ホールにて

2
六月、国立劇場にて、正倉院の復元琵琶を使った新作上演後、メンバーの皆さんと

想いに向かって歩んでいる人は皆素敵なエネルギーを発しているものです。私の周りにもそんな人が沢山います。年齢性別は関係無いですね。まあ中には余計なものに振り回され、空回りして、足踏み状態な人も居ますが、是非成就するまで、そしてその先の展開まで視野に入れて歩んで行って欲しいですね。想いを成就するには、自分から動かなければ、その歩みは始まりません。せっかく頂いた御縁も、待っているだけでは繋がって行きませんので、自分でじっくりと考えながら歩んで行って欲しいものです。
私のこれまでを振り返ると、若き日には、がんばったという充実感だけで何も成し得なかったことも多かったので、今はなるべく本当に自分が求めているものは何なのか、よく考えて視野をを広げ、目の前の波騒に囚われないように心がけています。また多方面から自分の作品や活動を見つめ、冷静な目を持つことも大事ですね。いわゆる離見の見というやつでしょうか・・・。
伎芸天s
伎芸天
成就というと何かを達成したという「形」を想像しがちですが、私は自分がやりたいと思っている道を歩んでいけている状態が、一つの成就だと思っています。勿論成果ということも大事なのですが、何か具体的な目標を持ち、「○○に成る」「○○賞を取る」「○○で演奏会を開く」このように考えてしまうと、そこに囚われて視野が狭くなるような感じがします。
それらは通過点や一つの成果でしかない。それよりもこの道で生きているという事、この道で精進しているという事こそ、想いの成就なのではないでしょうか。

私は自分の音楽を多くの人に聴いてもらいたい、と思っていますが、その想いを成就させる為に、考え勉強すべき所は勉強し、日々作曲したり演奏したりしています。しかしながらあまり具体的な目標を掲げてしまうと、かえって余計なものが目に付くし、時にそうしたものに囚われることも多いので、常に自分が一番自分らしい姿で在り続けるように心がけています。

音楽活動はベンチャービジネスを立ち上げるようなもの、とは私が以前から言っていますが、ビジネス展開をするという事でなく、総合的な視野を持てるかどうかという事だと思っています。簡単に言うとオタクに陥らないと言う事ですね。
曲は作曲しただけでは聴いていただけ無いので、演奏会を開いて聴いてもらう訳ですが、現代では、レコーディング、ネット配信までやって、それらに合わせて舞台活動を展開していかないと、情報過多のこの世の中ではリスナーには届きません。
舞台についても、どういう場所で、どんなプログラムや演出でやるかよく考え、レコーディングと演奏会をどのタイミングでやるか、どんな活動をしてゆけば自分の曲を聴いてもらって、認められてゆくか、様々な方向から考えて演奏、作曲、活動を展開して行くのです。とかく目の前の事に振り回されがちですが、曲作っただけ、演奏会をやっただけで満足していたら活動は広がりませんね。
IMG_0125撮影薄井崇友2
キッドアイラックアートホールにて。左 踊:牧瀬茜、As:SOON・Kim、映像:ヒグマ春夫各氏と。
右 Per:灰野敬二 尺八:田中黎山各氏と

よく作曲はどうするのですか、と聞かれるのですが、技術や知識の部分は別として、私は曲を創っている時には、その曲を演奏しているシチュエーションを想い描くことが多いです。プログラムの中で、何曲目に演奏するか、なんてことを思い浮かべながら作曲することも多いですね。結局私にとって作曲は自分の表現する世界を形作ると共に、そのまま舞台を作り上げることなので、理想の舞台を実現するために曲を書き、構成や演出を考える。演奏している時の自分の姿も思い描きながら、その先の舞台へと更に想いは広がるのです。

その上で、自分の思い描いているものに固執せずに、いつもとは違う舞台にも挑戦すると、更に視野も想いもどんどんと広がるのです。こういう活動はやってみないと判らない。やってみると大きな視野と幅がもたらされる事が往々にしてあります。それが豊かさとなって、自分の音楽や舞台に顕著に現れます。豊かさを感じられないものに人は寄ってこないものです。現代曲であれ、エンタテイメントであれ、そこに豊穣な魅力があれば、必ず注目されてゆきますよ。問題はそれを自分が感じる事が出来るかどうか・・・・・。

3
キッドアイラックアートギャラリーにて 踊:杉山佳乃子
もう無くなってしまいましたが、キッドアイラックアートホール&ギャラリーでは、自分の思い描く世界を超えた面白い舞台が何度も実現しました。こうした経験がまた想いを深くさせ、広げて行くのです。良い経験をさせてもらいました。

これからやってみたいこと、作ってみたい曲や世界はいくらでもあります。それをこれからも淡々とやって行きたいですね。その姿こそ、想いの成就に他ならない。私はそう感じるのです。

© 2025 Shiotaka Kazuyuki Official site – Office Orientaleyes – All Rights Reserved.