急に朝晩が寒く感じられるようになりましたね。私はこの位がちょうど良いですが、不調をきたす人も多いのではないでしょうか。
今年は暇だ暇だと言いながら、さすがにこの時期は何かと忙しくしています。確かにコロナ前に比べると大分少ないですが、まあ琵琶法師には稼ぎ時ですな。こちらに出ているので、気になる会がありましたら、是非お越しください。
毎年東洋大文学部の伝統文化講座をやらせてもらっているのですが、今年はいよいよ平家物語に特化した講座となります。今回は最初ではありますが、ストーリーや歴史の解説でなく平家物語を分析的に解読して行こうという内容で、儒教的な視点や浄土教的な描写そしてその対比、その他組織論的な解釈など、現代にも通じるちょっと今迄にない視点で語らせて頂きます。
また来月の琵琶樂人倶楽部は17周年の記念回でして、開催も何と190回を迎えます。来年には200回越えという何とも凄い事になっています。よくまあ毎月やって来たなと思いますが、ほとんど私の楽しみでやっているので、ストレスは全く無いのです。勿論17周年の記念の会の内容は私の真骨頂、現代作品の演奏をします。今回はメゾソプラノの保多由子先生、ヴァイオリンの田澤明子先生を迎えまして、新作から、来年レコーディングを予定している曲迄演奏します。その他ちょっとプライベートな会もあるのですが、大体こんな感じです。
10月11日(水)第189回琵琶樂人倶楽部「語り物の系譜」
13日(金)「秋風楽~琵琶と笛と朗読の会」 平塚八幡山洋館
14日(土)東洋大学文学部特伝統文化講座(レクチャーのみです)
11月8日(水)琵琶樂人倶楽部17周年記念
第190回「琵琶の洋楽器の新たな世界」
15日(水)カトレアの会演奏会 横浜能楽堂第二舞台
23日(木祝)「櫛部妙有朗読会」 音降りそそぐ武蔵ホール
25日(土)「能でよむ漱石と八雲」 松本市民会館
12月2日(土)「第4回和の音 篠笛と琵琶の集い」薫風工房
こうして琵琶を生業にしてこれまで生きて来れたのが本当に有難いですね。やればやる程に感謝しかないなと思えて来ます。綱渡りのような人生ですが、お金の事や人間関係など、私はあまり悩まないので好きなようにやって来れたのかもしれません。悩みと言えば作曲ですね。常に作曲をしているので、次にやる作品とそれをどういう風に上演するか、そんな所は大いに考え悩みます。琵琶はその特殊性故、とにかく自分でプロデュースをしていかない限り、待っていても流派の曲を並べただけの琵琶の会にたまに呼ばれるのが関の山。これでは音楽家としての自分の作品が上演出来ず表現者としての活動は出来ません。だから自分で機会を作って、自己プロデュースをやって行くしかないのです。まあベンチャービジネスを立ち上げるのと同じようなものですね。
自分でコンテンツを作って、広報や営業をして、実演して、作品も売って行く。ここまでやらないと琵琶を生業として弾いて回れる環境は作れません。まあお教室の先生で良ければ特に考える必要もないと思いますが、自分が演奏する作品もそれなりのバリエーションが必要で、同じような弾き語りしか出来ないのでは「仕事」にはなかなか成りませんね。そして常に状況に応じて作曲編曲をして様々な舞台に応える事も必要です。そして一番大事なのは、それらが単に「仕事を得るため」や「稼ぐため」「有名になる為」の曲ではなく、ポリシーを持って自分で紡ぎ出した作品であるという事ですね。芸人として「売る」事を最優先して生きている方も多いかと思いますが、私はエンターティナーではありませんので、とても芸人には成れません。自分に合ったやり方をするのが一番です。
私はすべての演奏に於いて自分で作曲したものを弾かせてもらっています。たまに(5年に一度位)作曲家の新作を弾く仕事を頂く事もありますが、それも納得いかないものはお断りしますね。私は強い人間ではありませんので、俗に流されることのないように常に「媚びない。群れない、寄りかからない」をモットーにしているのです。
私の作品にはメインとなる薩摩琵琶の現代曲や創作曲、樂琵琶の作品、その他尺八二重奏や筝の作品など約60曲がリリースされていますが、総て自分の表現する世界として自信をもって出せる曲だけを遺し、また舞台でも自分の作品を弾ける舞台のみ引き受けています。我儘と言われるかもしれませんが、妥協していては良い活動も出来ないし、納得の行く作品も創れません。画家や作家が適当に創った作品を世に出さないのと同じで、私も適当なものは出しませんし、お金目当ての演奏もしません。お金や名前につられて舞台に立っている自分の姿は想像したくないですね。舞台に立つ以上は自分の表現したい世界をやりたいのです。
世間的な収入という点では実に細々としたものなのですが、活動を始めて25年程CDのリリースもしてこれたし、ここ5年程はネット配信のお陰で、世界に向けて作品もリリースすることが出来ました。ネット配信の売り上げは圧倒的に海外です。とにかくコツコツと発表出来てきて嬉しい限りです。これからも充実した演奏会と作品発表のスタイルで頑張りたいと思います。この秋も充実した活動が出来ますように。